デンマーク視察(2016) 雑感

デンマーク視察にて今回感じたことを、自分なりの観点で整理してみます。

今回のテーマ:なぜデンマークは世界幸福度ランキングで第1位になったのか?

「世界幸福度調査の指標基準」

・一人当たりの国内総生産(GDP)
・健康寿命
・社会的支援(困ったときに頼れる人の存在)
・信用性(政治やビジネスにおける汚職のなさ)
・人生における選択の自由
・寛容性

今回の見学で注目した「一人当たりのGDPが高い理由」は何か?高い労働生産性/時間を実現しているにどんな背景があるか?について、ポイントだと感じたこと。

・高付加価値を生み出すために
→デンマーク人はびっくりするような高い値段設定をする傾向
→おおざっぱでもまず目標を決めてからそのギャップをすり合わせながら埋めていく実験主義
→一人一人の創造性を育む独自の教育(教えない教育)

・高い労働生産性/時間を生むために
→限られた時間内に集中して仕事を終えるという考え方(残業するのは仕事の仕方が疑問視される傾向)
→家庭、仕事の両立が結果として、国家の利益につながっていくという共通認識

【根底にあるもの】
教育の独自性
・概念→一人一人の意欲にフォーカスし、個性を尊重し、自尊心、自立心、創造力を育む教育。
キリスト教やアンデルセンの童話などでを、生きるための基本的な考え方(哲学・思想など)を子供の頃から学ぶ(信教は自由)
・受験戦争、学歴社会でない→高等教育は職業訓練の場、インターンなどで実務経験を積むので、社会人になったら即プロフェッショナル人材として活躍している。

安心して働ける環境づくり
・就職→企業に就職するというよりは、労働組合に所属しているという感じ。組合で最低賃金は保障されている。どの企業で勤めても、職種が同じなら給料も同じ。あとは就職先との交渉次第で、その企業で貢献する実力をPRすることで上げることはできる。なので転職の際、そんなに賃金が乱高下することもない。解雇に関しても、双方の役目が終わっただけという認識で、また別の場所で役目を果たせばいいという考え方でストレスがない。実際に、生涯平均転職回数は6回と言われている。
子育ての支援→保育園だけではなく、ベビーシッターなどが親の事情に合わせて柔軟に時間設定。助成金が75%出る

国への関心
国に関心を持つように小学校からディベートをする。
高福祉である分、税金がめちゃくちゃ高い(税負担率は約70%で世界一)のもあり、そのお金の使われ方に関心が向く
人口約550万人、国土は九州くらいでの小国で、スリムな政府である。

歴史
長い歴史の中で隆盛も衰退も経験しているし、国土争いも繰り返してきた。
第二次世界大戦ではナチスドイツの侵略戦争も経験。
その中で、国民の生命と生活、文化、国土を守るという認識をひとりひとりが持っており、今の高福祉体制や人の個性や尊厳を理解し、尊重する風土ができあがっていった。

TRUTH IS FLEXIBLE(真実は柔軟)
コンテナオフィスUNIONKULで見つけた標語ですが、人との関わり合い方、環境設計、教育、国家の運営とさまざまなところで、原則として生きているという感じで、私が最も印象に残った言葉でもあります。

すべては「ヒュッゲ(Hygge)」に行き着く
デンマーク人の価値観を表すような有名な言葉に、「ヒュッゲ」がある。
いろんなシーンで使える言葉で、「心地いい」という意味がある。
日本語でいう例えば、美しい自然を見てふと心を落ち着かせるときの感じかもしれないし、
家族や大切な人寛いだ時間を過ごす感じかもしれない。
忙しい中、ちょっと一息、お茶を飲んで和んでいるときかもしれない。
解釈はいろいろあるけれども、デンマーク人は、家庭でいるときにしろ、働く時間にしろ、
「まあ、いろいろあるけれど、ヒュッゲで行こうや。」ということを共通認識にしているのかもしれない。
これまでの歴史の中で軍事的危機、経済危機、エネルギー危機と、幾度となく国のピンチを乗り越えてきたスカンジナビアの小国が、国家と国民のアイデンティティの存亡がかかった中で醸成されてきたもので、なんとなくこんな風になったらいいなぁという薄弱な願望というより、強い意志を感じました。

【事前に用意していた個人的な質問の回答】
①ものづくりの現場などで、日本では5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)や改善といった概念があるが、デンマークではまたはこれらに似たような概念や仕組みとしてどんなものがあるか、またこれらは、どのように組織で認識され、根付いているか? 個人としても、これらは認識されているのか?(日本では5Sの定義と聞いてちゃんと答えられる個人は少ない)→ない。環境設計においては国が法律で細かく定めているということはある。掃除については、日本の神道の穢れを祓うや仏教の心を磨くようにとかといった精神性が融合した考え方はない。レゴの本場だけあって、整理や整頓などの概念の方が強い?

②個性を伸ばし、創造力を引き出すための工夫として実際、学校の授業の進め方はどんな感じだろうか? デンマークならではのコンテンツやツールなどがあれば知りたい(レゴなどは教育現場でも使われているのだろうか?)→アルバスルンド特別支援学校では、TEACCH、教員の妙さんはレゴも使われていた。

③読み書きそろばんなど、基礎的な教育反復演習でステレオタイプになりがちな気がするが(イメージとて例えば公文式)、デンマークではこれらも創造的な学び方をする発想ややり方があるのだろうか?→ない。どちらかというとディスカッションやディベート重視。議題に対して自ら考え、自らの意見を持つトレーニングのようなイメージ。なので、基礎学力は日本人が上だったりするかもしれないとのこと。

【雑感】
長時間労働の是正について
→付加価値を生まない長時間労働をやめることはいいことだが、それに代わって、どんなことをポイントに改善をして行くのか、働く人一人一人が認識していないと、仕事時間は減った→暇になったが時間の使い方がわからない→何をしていいかわからない→無目的な時間に流されていく人も増える

つまり、なぜ働く時間配分を変えるのか、何をやめて何を新たに始め、結果として、今よりどんないい状態を目指すのか、働く人側が認識できていないと、空白の時間を余計にさまようタイムラグができ、ただただ固定費である人件費が増大すする、それが致命傷になることもあるかと思います。

人間本来の能力が最大限に発揮できる働き方をするからこそ、高い労働生産性ができる国ができ、国家と国民を守ることができる、この共通認識が背景にある→デンマークの場合、そもそもの働き方を人間工学に基づいてブラッシュアップしてきた結果、今の形があるのだと思う。

変革の裏付けには、ひとりひとりが時間あたりの労働生産性(付加価値/人数)を高めることを認識し、これらの仕事に特化できること、それらを支える組織なり、社会のフォローが同時並行であること。

結局のところ、何も特別なことが大切なことではなく、今やっていることは本当に必要かどうかをよく見極めることなんだなと思いました。

デンマークは、100年以上の前からの取り組みが積み重ねられた結果できた福祉国家としてのアドバンテージがあります。そして、今も常に変革を図っていて、たまたまそのアドバンテージの分だけ、外から見るとうまくいっているように見える部分もあるかと思います。

もし、私たちが今、労働生産性を高めるために、デンマークや北欧の働き方を参考にするのであれば、枝葉末節の部分ではなく、その根本的な思想や哲学、歴史、文化、価値観の違いなど考慮に入れて、自分たちなりのカスタマイズをしていく必要があると思います。また、そのような議論を人と人とが向き合う中に、労働生産性の高い個人、企業、社会、そして国家づくりがあるのではないか、と感じています。

上記は、今回5日間という限られた時間で、現地で働くデンマーク人、現地で長く住み働く日本人たちのインタビューを通じて確認できたことです。なので、まだまだ書けていない部分も多々あります。これは次回の宿題として残しておきます。

今回の旅にあたり、デンマークとのご縁をつなげてくださった株式会社山崎文栄堂の山崎登社長、若狹常務、現地でご案内してくださった澄子さん、マチコさん、ツムラーレの皆様、見学を快く受け入れてくださったアルバスルンド支援学校(タンブル有田妙さん)、UNIONKUL様、BODUM®︎様、NOVO NORDISK様、それから1週間日本をあけている間に、3歳と0歳、二人の子供の面倒を見てくれた妻や実家の両親、仕事のスケジュールを調整してくださった関係者の皆様など、応援・協力してくださった皆様に感謝します。

この旅に出る前に、予習として読んでいたおかげで参考になった書籍も紹介しておきます。
・消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし-角川SSC新書-角川SSC新書-ケンジ・ステファン・スズキ/
・なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか-―人生を好転させる「空間」の活かし方-小澤-良介/

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